Photo credit: Kilgub / Foter / CC BY-NC-ND
こんにちは。
司法書士の熊木です。
マレーシアに住んでらっしゃる方や
マレーシア国内に資産(預金や不動産など)をお持ちの方から、
「遺言はマレーシアでつくったらいいの? それとも日本?」
という質問を受ける機会が多くなってきました。
これは専門家によって色々考えはあるかもしれませんが、
私としては、
「マレーシア法方式の遺言」と「日本法方式の遺言」
どちらも作成することをお勧めしています。
「マレーシア法方式の遺言」は、
遺言者に万が一のことがあったときに
マレーシア国内の資産の名義変更をスムーズにします。
万が一のことがあったときにもし遺言がなかったとすれば、
マレーシアの相続法に基づく長くてややこしい手続きを経た後でなければ
名義変更をすることができません。
日本のように、単に相続人全員が遺産分割協議書に署名捺印して印鑑証明書を提出すればすぐに名義変更できるものではないのです。
(なお、預金に関しては、夫婦共有名義の口座にしておくことで、このややこしい手続きを回避できることがあります)
そして、
「マレーシア法方式の遺言」には、
マレーシア国内の資産を誰に相続させるか、ということを書くに留め、
日本国内の資産については「日本法方式の遺言」を別途つくっておくのがベターです。
上で、日本なら「単に相続人全員が遺産分割協議書に署名捺印して印鑑証明書を提出すればすぐに名義変更できる」と書きましたが、
そもそも「相続人全員が遺産分割協議書に署名捺印」に至るまでが大変なことであり、
なかなか話がまとあらないからこそ日本全国津々浦々で相続ならぬ「争続」が多数発生しているわけです。
「マレーシアに比べれば、日本の名義変更は簡単」ということに安心せず、
この機会に、日本の資産についてもきちんと遺言をつくっておくことをお勧めします。
なお、法律的には、
「マレーシア法方式の遺言」の中に、日本国内の資産の相続について記載することもできます。
しかし、遺言者が亡くなり、
実際にその遺言でもって名義変更等をする段となったとき、
日本国内の資産の名義変更に関して、事実上は様々な障害が発生する可能性があります。
例えば、
その遺言がマレーシアにおいて有効に作成されたものであることを関係各所で説明する必要があったり、
そのために手続きが滞ったり、
その遺言によって不利益を受ける相続人(法定相続分より少なくなってしまう相続人)の理解を得るのが難航したり。
相続人が銀行窓口へマレーシアの遺言をもっていく状況を想像してください。
銀行お得意の「前例がないので、、、」に相続人がイライラしている場面が容易にイメージできるかと思います。
日本で遺言一通作成する費用は、
通常は公証人の認証料込みで十数万から二十万円前後、
資産家の人や相続人が多い人でせいぜい数十万円かと思います(銀行で作成するともう少しかかるかもしれませんが、、、)。
遺言が一通あるだけで相続人同士が円満にやっていけると考えれば(内容や経緯にもよりますが)、
決して高い金額ではないと思います。
我々の業界ではよく言うのですが、
相続が「争続」に発展するのは、遺産の多寡にかかわりません。
遺産が少ない場合でも、多い場合でも、揉めるときは揉めるものです。
「うちの子どもたちは仲が良いから遺言がなくても大丈夫」とは考えず、
仲が良いからこそ、その関係を壊さないためにも遺言を用意してあげましょう。
司法書士 熊木雄介
Mail: info@office-kumaki.name
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