「マレーシアで今すぐ有効な遺言を残す方法 その3」
としまして、
遺言をつくるときに忘れてはいけない「遺言執行者」のお話しをしたいと思います。
今回と次回の2回シリーズで考えておりまして、
今回はまず、導入部分として以下の小話をお読みいただければと思います。
読まれる前に先に言い訳的なことを申し上げておきますが、
実は今日のお話し、本当はもっとドロドロした親族間の争いのお話しにした方が遺言執行者の必要性が分かりやすく、
私としても次回の教訓話を書きやすいのです。実際初めに書いたお話しはそういうもので、もう少し長い文章でした。
でもあまり暗い話しを載せると気分を害する人もいるだろうということで、わりと円満な親族のお話しに書き直しまして、
その分、ちょっと導入話としてはインパクトというか伏線というか色々足りない内容となってしまいました。
人によっては物足りないかもしれませんが、次回の理解につながる部分ですし、短いお話ですので、
ぜひ最後までお読み下さいませ。
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遺言をかかえて悩む花子さん
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1通の遺言書をもって司法書士事務所へ向かうひとりの女性がいます。
女性の名前は甲野花子。
その遺言には、
不動産のうち、下記マンションは甲野花子へ遺贈する
ということが書いてあります。
この遺言は、3ヶ月前に亡くなった親戚の太郎叔父さんが残してくれた「自筆証書遺言」。
定年退職後マレーシアへ移住し、人生を楽しみ尽くした後に亡くなった、
花子が尊敬する叔父さんでした。
太郎には3人の子どもたちがいましたが、
みな日本と海外を行き来するような仕事をしていて多忙であったため、
主に花子が太郎の最期のお世話をしていました。
「最期の面倒を見てくれた花子に資産の一部を渡したい」、
太郎はその想いから、人知れず自筆証書遺言をしたため、死の直前に花子さんに手渡したのでした。
別に遺産目的でお世話をしたわけではないけど、
それでももらえるとなるとやはり正直嬉しい。
花子はありがたく受け取ることにしました。
ただ、太郎叔父さんの子どもさんたちにこの話しをするのは気が重い。どうしよう。
子どもたち(花子の従兄弟)との関係は悪くないけど、
さすがに遺産のことを話すとなると気を重い、、、
しかしそれでも話さないわけにはいかない、、、
3ヶ月ほど気が重い日々を過ごした後、いよいよ意を決して子どもたちに経緯を話しました。
返ってきた答えは、
「花子ちゃんには本当にお世話になったので、どうぞ遠慮なくもらってください」
子どもたちは快く承認し、家庭裁判所での検認手続きにも協力してくれました。
よかった。
これでもうあとは、
遺言があるんだから、
司法書士に頼めばすぐに不動産を自分名義にしてくれるはず、、、
子どもたちは今回は快く承認してくれたけど、
できれば今後はもう私ひとりで速やかに手続きをすませたい。
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名義変更ができない、、、!?
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花子は司法書士事務所へやってきました。
ところが、、、
司法書士の口からは思ってもいなかったことが。
「結論からいうと、この遺言では、不動産を今日すぐに花子さん名義にはできません」
え、どういうことですか!?
遺言は無効なんですか、、、!?
「いや、自筆証書遺言の要件は満たしてるので花子さんのものではあるんです。
でも、この遺言の書き方では、あなた名義にするには相続人のハンコがいるんです。
相続人っていったら、今回の場合は太郎さんの子どもさんたちですね。
そういう意味で『今日すぐに名義変更はできません』と申し上げたのです」
相続人のハンコが要るって、、、
有効な遺言が私に遺贈するって言ってるのに、相続人のハンコがいるとかそんなことあるんですか!?
もしそうなら、遺贈を受ける人と相続人との仲がうまくいってない場合なんかだと、
名義変更できないこともあるじゃないですか?
納得がいかずやや前のめりになる花子さん。
「あるんですよ。
法律的なややこしい話は省きますけど、この遺言では遺言執行者が定められてないでしょ。
遺言執行者が定められてない場合、遺贈で不動産の名義変更をするときには、相続人のハンコがいることになってるんです。
もっというと実印が必要で、印鑑証明書も必要です。
あなたが太郎さんの推定相続人の一人であったならこういうことにはならなかったんですけど、あなたは姪っ子ですからね
もしくは、あなたがおっしゃるようにハンコや印鑑証明をもらうのが難しければ、家庭裁判所で遺言執行者の選任を申し立てる方法もありますが、どうしましょうか?」
そうですか、、、
実印と印鑑証明書をお願いしないといけないのか、、、
それか家庭裁判所で手続きか、、、
また気が重いな、、、
叔父さんの子どもたちは次はいつ日本へ戻ってくるんだろうか、、、
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導入部はここまで。 次回は、、、
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お読み頂きありがとうございました。
次回は、今日のお話しから引き出せる教訓を「遺言執行者」と絡めてお話ししようと思っています。
遺言執行者のお話しの後も色々と書きたいことが溜まっておりまして、
・MM2Hを取ったときにつくったマレーシアの遺言だけで充分か? 日本の遺言はつくらなくていい?
・もし海外居住者に遺言が無かったら、、、
・海外の遺言と日本の遺言、そのどちらもを管理して執行してくれる人が必要?
・海外にいる自分が相続人になったときはどうする?
・マレーシアでつくった遺言と日本の遺言の関係
というあたりの記事を投稿していこうと思っています。相続関係以外にも、会社法務の関係の記事も書いていく予定です。
それではまた次回。
司法書士 熊木 雄介
Mail: info@office-kumaki.name
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下の写真は、本文とはまったく関係のない今日昼食を食べたローカル食堂での一枚。経済飯大好き。