遺言執行者って必要?

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皆さま、こんにちは。

司法書士の熊木です。

さて、前回に引き続き「遺言執行者」についてのお話しです。

今回は、

太郎叔父さんが遺言の中で

「遺言執行者は司法書士の乙野次郎にする」とでも書いていてくれたとすれば、

前回のお話しはどう変わったか、

そういう視点から、遺言執行者の必要性についてお話ししていきたいと思います。

今回のお話しは前回の続編ですので、まだ読まれていない方は、まず先にそちらをお読みいただければと思います(下の記事)。

前回の投稿『遺言執行者の必要性を語るためのマレーシアの太郎さんと花子さんの小話』

 

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花子に代わって、遺言執行者が
遺言の内容を子どもたちへ伝えてくれる
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さっそく本題に入ります。

前回のお話しでは

「花子が遺言の存在を太郎の子どもたちへ伝えることを悩む」

という場面がありました。

もし太郎が遺言執行者を定めていてくれたとすれば

このシーンはどうなっていたでしょうか。

同じように花子は悩む必要があったでしょうか。

 

いえ、遺言執行者が指定されていたとすれば、

このシーンはなかったはずです。

なぜかというと、

遺言の存在を伝える役割は、遺言執行者が担うことになったであろうからです。

通常、遺言執行者は遺言を遺言者から預かります。

そして遺言者が亡くなった際、

関係者(相続人や遺贈を受ける人たち)へ連絡し、以後遺言の内容を実現するために動き出していきます。

ですので、

「遺言のことを話すのは気が重いなあ」

と花子が悩んでいた場面は、

「遺言執行者が第三者の立場として、粛々と子どもたちへ伝える場面」へと替わることになります。

これによって、

親族間で生々しいお金の話しをするという事態を避けられ、

花子は精神的に気持ちが軽くなったことでしょう。

また、太郎の子どもたちにとっても、

遺言によって利益をうける花子から遺言の存在を知らされるよりも、

第三者である遺言執行者から知らされる方が、

より納得できるということもあったかもしれません。

 

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名義変更する際に、
子どもたちの協力が不要になる
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「不動産の名義変更をするには、太郎の子どもたちのハンコがいる」

と司法書士に告げられて花子さんが肩を落とす場面がありました。

この場面についても、

遺言執行者が定められていれば無くなることになります。

 

なぜなら、

「遺言執行者は、これを相続人の代理人とみなす」と民法で定められているからです(民法第1015条)。

ここで言う「相続人」とは、

「遺言が無かったとしたら、本来相続をする権利があった人たち」のことを言います。

本件の場合、それは太郎の子どもたちのことを指します。

つまり、

遺言執行者はあらかじめ相続人の代理人と定められているので、

今回の不動産名義変更についても、

遺言執行者と花子さん、この二人のみによって手続きを完結できるわけです。

太郎の子どもたちからハンコをもらう必要もなければ、印鑑証明書を貰う必要もありません。

 

ということで、

もし太郎が遺言執行者を定めていたとすれば、

「司法書士事務所で花子が肩を落とす場面」は、

「遺言執行者と花子さんの二人のみで司法書士事務所を訪れ、速やかに名義変更を実現する場面」へと替わることでしょう。

 

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海外に資産がある人は
遺言執行者に財産目録を渡しておく
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遺言執行者の必要性は、主には、この花子さんの事例で述べた2つですが、

あともうひとつ付け加えるなら、

遺言者の遺産を把握する第三者という役割、というものがあります。

 

今回の太郎さんのようにマレーシアに住んでいたとかで海外にも資産をもっていたりする場合、

少なくとも誰か一人に自分の財産の詳細(どこに何がいくらくらいあるか)を伝えておくべきです。

このことは、たんに日本だけに資産がある人にとっても重要ですが、

海外にまで資産が分散している人の場合、本人が亡くなってしまうと遺産の全体像を把握しきれなくなる可能性が高いので、

より重要です。

財産の詳細を伝える相手としては、奥様やご主人様でもよいですが、

万が一、お二人で旅行中に不慮の事故にあってしまった場合などを考えると、

第三者にも伝えておいた方がベターかと思います。

その第三者としては、会社などを経営されていて顧問の税理士さんがいらっしゃる場合は税理士さんでもいいですし、

そうでない場合は、遺言作成の際に遺言執行者に伝えておくのがよいと思います。

 

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今日はここまで! 次回は、、、、
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お読みいただきありがとうございました。

次回以降では、

・もし海外居住者に遺言がなかったら、、、
・マレーシアで作った遺言だけで大丈夫?
・自筆証書遺言のデメリットは?
・海外の遺言と日本の遺言、その両方の執行を管理してくれる人が必要では?

という内容の記事を投稿していこうと思っています。

それでは、また次回!

司法書士 熊木 雄介
Mail: info@office-kumaki.name

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