こんにちは。
KSG Holdings Ltd.の司法書士 熊木です。
マルタのブロックチェーンサミットから戻ってきました。
マルタには8日間滞在し、
現地のローカル銀行、国際銀行、会計事務所、法律事務所などとのミーティング、
そして、
8000人以上もの参加者により大いに盛り上がったブロックチェーンサミットに参加し、
最新の現地情報を入手してきました。
マルタは、イタリアのシチリア島の南に位置する、東京23区の半分ほどの面積の小さな島ですが、
マルタ共和国という独立した国家です。
小さな国であるがゆえに、
生き残るために、結構尖った政策で海外からの投資を集めており、
これまではオンラインゲームのライセンスや、様々な長期滞在ビザや市民権取得プログラムなどで有名でしたが、
この度、ブロックチェーン関連の事業を誘致する積極的な政策を打ち出したことで注目されています。
ブロックチェーン誘致の政策を打ち出した国としては、
以前私もこのブログでご紹介したようなベラルーシや、
エストニア、スイス、ジブラルタルなどいくつかの国がありますが、
取引所最大手のBinanceや、OKexなどがそれらの選択肢の中からマルタを選択し、本拠をすでにマルタに移すなど、
現状、マルタが一歩抜きん出た感があります。
この点、やはりまずは現地にいって、肌で感じてこようということで、
今回のブロックチェーンサミットのタイミングに合わせて予定を調整し、現地を訪問した次第です。
ただ、ひとまず結論的なことを申し上げますと、
マルタでさえも、まだまだこれから、という印象です。
ブロックチェーン関連、おもに仮想通貨関連の事業をする場合に
いま大きな課題となっているのは、銀行の協力が得られない、
つまり、銀行が「仮想通貨関連事業を行う法人の口座開設をしてくれない」という問題があります。
例外的に日本のみ、
銀行がわりと簡単に口座を開設してくれるようですが、
他の国ではまったく状況が異なります(つまり、口座開設ができません)。
これは、銀行としては、
仮想通貨関連事業の法人の口座を開設すると、マネーロンダリングに巻き込まれる可能性があるためできる限り避けたいと思っている、
という点が主な理由ですが、
対中央銀行に対するアピールやOECDに対するアピールとしても、仮想通貨関連口座を扱っていると色々とややこしいことが生じるのだと思います。
ちなみに、ラブアン法人に関して、
仮想通貨事業や仮想通貨投資に適した法人であるかのような情報がインターネット上などで出回っているようですが、
マレーシアやラブアンの銀行は、仮想通貨に関してまったくウェルカムではないですし、
政府も仮想通貨に対する態度を曖昧にしたままですので、
ラブアン法人が仮想通貨関連事業に関して適した法人であるとは、残念ながら、今のところは言えません。
このような世界的な状況に対して、
ブロックチェーン国家として明確に舵をきったマルタ共和国の銀行の受け入れ状況を確認する
というのが、今回の視察の大きなテーマでした。
ただ、残念ながら、現地で情報収集をした結論としては、、、、、
今の段階ではまだ、銀行の受け入れ体制は整っていないようです。
かろうじて、
マルタのローカル銀行のひとつが、仮想通貨関連事業の Operational account、つまり給料やオフィス代などの経費支払いのために使用する口座の開設を、厳格な事前審査を条件として認めてくれていますが、
ほとんどの銀行では不可です。
ましてや、仮想通貨取引所の口座との入出金につかえるような Transactional account の開設は、もちろんまだ受け入れをしてくれる銀行はほとんどなく、
唯一、ある銀行のみ、やはり厳格な事前審査を条件として、Transactional accountの開設を受けて入れてくれる可能性がある、
とのことでした。
もちろん、
Operational accountの開設を認めてくれる銀行がある、というだけでも他の国に比べると進んでいますし、
マルタのブロックチェーン関連の新法案もまだ施行されたばかり(2018年11月1日に施行)ですので、
今後、マルタのライセンス制度が整ってくれば、
銀行としても、ライセンスを保有しているブロックチェーン関連企業に対しては、国のお墨付きがあるということですので、
口座開設をしやすくなるかと思いますが、
まだしばらく、半年ほどは様子見が必要な印象は受けました。
なお、
取引所最大手であるBinanceが、一般的な銀行と、仮想通貨取引所の橋渡しとなるような銀行を自らマルタで開設することにチャレンジしているらしいので、
これには大いに期待したいところです。
口座開設以外の点では、
明確にブロックチェーンや仮想通貨が政府によって認められており、
法制度も整い始めているという点で、
合法的にビジネスがしやすい環境は、他国を引き離していく感は受けました。
ただ、同時に、
そもそもブロックチェーン技術やそれによる仮想通貨というものは、
厳格なルールの対象とならず、柔軟性があり、スピーディーな展開が可能である、
という点が大きな魅力であったにもかかわらず、
結局、今回施行されたマルタの法制では、
ICOも、取引所も、仮想通貨への投資でさえも、政府がつくった厳格なルールの下に行われるものとなっており、
その制度化においては、事業者側からすると、これまでの従来の資金調達手法(株式発行、社債発行、ファンド組成など)と比べてICOのメリットがほとんど感じられないように感じます。
そして、投資家目線からしますと、
規制が厳格になり、ICOが普通の投資商品として扱われるようになれば、
これまでのような大きなキャピタルゲインというものも徐々になくなっていくでしょうし、
そうなりますと、
ICOへの投資は、
株式への投資と違い、
その発行母体である会社等での議決権が得られるものでもなく、毎年の配当もなく、そしてその会社に対する持ち分割合もない投資であることがほとんどですので、
徐々にICOへの投資が盛り下がってしまう懸念があります。
今後、マルタの制度がこの規制と自由化のバランスという問題に対して、どのようなところに着地するのか注目です。
それではまた。
2018年11月6日
司法書士 熊木 雄介
Email: info@office-kumaki.name
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