こんにちは。
KSG Holdings Ltd.の司法書士 熊木です。
先日、以下のようなツイートをしました。
「新しく法人設立するよりも、既存マレーシア法人を買い取った方が早いですか」
というようなご相談がわりとよくあるのですが、
私としては、基本的には、既存の法人の買い取りはお勧めしておりません。— 司法書士熊木雄介@マレーシア8年目 (@yusukekumaki) March 17, 2022
今回のブログ記事では、この点をもう少し掘り下げて書いていこうと思います。
結論:買い取りは基本的にはお勧めしておりません。
今回のお話しは、
マレーシアにて起業、あるいは自身で就労ビザを申請する際に必要となる現地法人(マレーシア法人やラブアン法人)をどのようにして用意するか、
つまり、「自分で設立するか」、それとも、「すでに存在する法人を売ろうとしている方がいれば、その方から既存法人を買い取るか」、という話なのですが、
基本的には、私としては、既存の法人の買い取りはお勧めしておらず、新規で設立する方をお勧めしています。
既存法人の買い取りの方をご検討されている方々としては、おそらく、
新しく会社をゼロから作るよりも、
すでにある中古の会社を買い取った方が、手続きも簡単で手間もかからず、費用も安くなるのではないか、
ということを期待されているものと思いますが、
残念ながら、すでに存在する会社を買い取る、ということはそれほどシンプルな話しではありません。
買い取りをお勧めしない理由
といいますのも、
まず、
既存の法人の場合、それまでの事業活動によってどのようなリスクが生じているかが分からない、
という点があります。
それまでの事業活動によって様々な契約関係が生じてきたなら、それらの契約の顧客等に対する契約上の債務や損害賠償リスクが残っていたり、後から生じる可能性がありますし、
もしその会社が、他の会社の債務の保証をしていた場合などの保証債務は会計帳簿上はでてきませんので、会社を買い取った後、その保証債務が明らかになる可能性もあります。
このようなリスクがありますので、
本来は、買い取りをする前に、法律事務所や会計事務所に依頼して法務上のリスク・税務上のリスクなどを調査をしてもらうべきであり、
それらの費用や手間は、新規で設立する場合よりも大きくなることが多いです。
また、たとえ費用や手間をかけてそれらの調査を行ったとしても、
上記のような損害賠償リスクや、保証債務のリスクは100%調べきれる性質のものでもありませんので、
ある程度のリスクは残ったまま、会社を引き受けるということになります。
さらには、
マレーシアの場合、政府が後出しルールを過去の年度に遡って適用してくる、というようなこともあり、
そのようなことがあれば、買い取る前の税務や法務に関しても、買い取り後に対応しなければならない、
というようなことも有りえます。
したがいまして、たとえば、もし「今まで一切事業活動していませんので契約上のリスクなどはありません」という売り手の場合でも、
政府側のルール変更により、過去の年度に関して法務上や税務上の義務が後から生じる、ということはありえますので、新規法人を設立するのと比べると過去年度のリスクを抱えるということになります。
(また、そもそも、たとえ売り手が「設立以来一切事業活動はない」と言っているとしても、
それが事実かどうかは調べないことにはわかりませんし、私の経験上、ラブアン法人を積極的に使ってこなかった方の場合、ラブアン法人に関する法務や税務の記憶が曖昧になっており、
実は少し事業活動があったことを失念していたり、法務や税務の届け出が遅れていたり、ということがわりと多くある印象です)
なお、これらのリスクを軽減するため、
会社を売却する際の契約(株式譲渡契約:Shares Purchase Agreement等)によって、
買い取り前の債務等に関しては買い手側が責任を負う、というような取り決めをすることはもちろん行われたりします。
ただ、そのような契約を締結したとしても、
後日、事前に知らされていなかった過去の債務等が発生した場合には、実務的には、まずは買い手側が対応しなければならない部分も多くありますし、
売り手が誠実に対応してくれない場合は、法的措置なども必要となり、その手間やコストもかかります。
さらには、
上記のような買い手・売り手間の取り決めの契約書を作成するにも、
マレーシアの法律事務所に対する契約書作成費用が別途発生しますので、
当初の目的であった「新規設立するよりも費用や手間を抑える」という点に関して、この点でも、メリットがなくなっていくどころか、むしろ既存法人を引き受ける方が費用が高くつくケースは多くあります(特に、上述したような、法律事務所や会計事務所に対象法人の事前調査を依頼する費用は、私の経験上は、法人の新規設立費用よりも高い場合が多いです)。
・・・というような理由などから、
単に「買い取った方が早い&安いのでは」というお考えの場合は、
私としては、基本的には、買い取りはお勧めしていない、という次第です。
例外的に既存法人の購入を検討しても良い場合
例外的に、
その対象会社が、すでに特殊なライセンスを取得していたり、組織として収益を生み出すような仕組みができあがっている場合などは、そのメリットと上記のデメリット(手間やコスト、そしてすべてのリスクは調べきれないこと等)を比較検討のうえ、購入へと進まれるのは有りかと思います。
なお、特にライセンスなどはないけれども、すでに銀行口座をもっている既存会社にメリットを感じて購入をご検討されている方もいらっしゃいます。
これらの場合、多くは、急ぎで資金を受けたい場合などに、「名義変更さえすればすぐに法人として入金を受け取ることができる」という点にメリットを感じて、口座付きで買い取ることをご検討されてらっしゃるというケースかと思いますが、
私の考えとしては、本来そのようなケースでも、上記のとおり、事前に法律事務所や会計事務所などの調査を入れてから買い取るという手続きをすべきですので、
きちんとリスクを減らす手続きを進めるとすれば、期待されている「すぐに法人として入金を受け取ることができる」状態にはならず、目的は達成できない、ということになります。
もちろん、すべてのリスクに目をつぶって事前調査などをせずに、すぐに名義変更をすれば、
ご期待されているメリットの部分は享受できることにはなりますが、
その分、会社を引き受けた後に、上記のようなリスクを抱えることになる点はご留意いただいたほうが良いです。
ご相談・ご依頼の方法、流れ
ステップ1:
選択肢1:PDF「ラブアン法人ガイド」
2019年から始まった一連のラブアン税制改正の結果、
現在のラブアン法人の制度は、少々複雑なものとなってしまっております。
インターネット上の情報も新旧・正誤入り乱れており、
どの情報を信じて良いものか、混乱されているのではないでしょうか?
そこで、
弊社では、
これまでブログにてマレーシアやラブアン法人の最新情報を7年に渡りアップし続けてきた代表の熊木が、
- ラブアン法人の設立
- 銀行口座開設(オンショア口座、オフショア口座)
- 就労ビザ・扶養家族ビザ申請
- ラブアン税制の大改正の内容
- 法人税申告の流れ
- ラブアン法人をご利用いただく場合の注意事項、現時点での懸念事項
- 設立、口座開設、ビザ申請、次年度以降の維持の費用
- 弊社へご依頼いただく場合のサポート費用
といった多岐に渡る項目につきまして、
最新の情報をひとつのPDFとしてまとめたものを
販売させていただいております。
合計93ページ、約49,000字のボリュームとなっておりますので、
お知りになりたい点は概ねカバーされているかと思います。
また、「最新の情報」という点においては、
一度ご購入いただければ、その後に改正等によりPDFのアップデートを行った場合には、
その最新版を無料でダウンロードしていただくことができるようにしております。
ラブアン法人のことだけでなく、
一般のマレーシア法人との比較なども解説しておりますので、
マレーシア法人とラブアン法人のどちらを設立するかを悩まれている方にとっても役立つ内容かと思います。
なお、特典としまして、
法人設立、ビザ申請等の初期費用、そして、次年度以降の費用の概算を事案に応じて算出できるよう、
エクセル形式の費用概算シートもダウンロードしていただけます。
必要書類についても、単にリストを添付するだけでなく、
解説を付して、別紙としてまとめております(16ページ、7500字)。
体系的に、かつ、最新情報をご入手いただきたい場合は、
下記の弊社オンラインストアより、
ぜひ今すぐ、「ラブアン法人設立、口座、ビザ申請ガイド」をご入手いただき、
ラブアン法人設立、ビザ申請の不明点等をできる限り早く明確にしていただき、
次の一歩に繋げていただけますと幸いです。
お読みいただいた後、不明点などありましたら、
メールでご相談いただいたり、下記「選択肢2」のご面談のコンサルティングサービスをご利用くださいませ。
お支払いにつきましては、
Paypalのほか、「別のお支払方法」から、クレジットカードでご購入いただくことが可能です。
当ガイドの購入費用につきましては、
購入後1年以内に実際に法人設立費用に進むこととなった場合には、
設立サポート費用から控除させていただきます。
目次:
なお、マレーシア法人設立につきましても、
現在、設立ガイドを作成中ですので、完成次第、上記のオンラインストアにアップさせていただきます。
今のところは、まだ有料で販売するほどのボリュームや完成度ではありませんので、
マレーシア法人の設立をご検討されている旨をメールいただきましたら、
無料で交付させていただきます。
その他のサービス、分野等に関しましても、随時、執筆していきますので、
完成次第、オンラインストアにて販売させていただきます。
選択肢2:ご面談(オンライン、または対面)でのコンサルティング
Zoom等でのオンラインでのご面談、もしくは、弊社クアラルンプールオフィスでのご面談を承っております。
なお、ご面談の場は、セールスの場ではなく、
コンサルティングの場、アドバイスをさせていただく場であると考えておりますので、
ラブアン法人を利用する場合のデメリット面、注意事項なども十分にお話しさせていただき、
もしご相談者様にとって、ラブアン法人設立が最適な選択肢ではない場合は、正直にそのようにお伝えさせていただきます。
ご希望の場合は、下部のお問い合わせフォームより、
- ご希望のご相談方法(Zoom、Skype、またはクアラルンプールオフィスでのご面談)
- ご希望のご相談日時の候補日を2つほど(土日祝日以外)
をお知らせくださいませ。
ご相談費用としましては、1回1時間までのご相談としまして、USD100(約11,000円)とさせていただいております。
ご相談日時が決まりましたら、お支払い方法やお支払先をご案内申し上げます。
なお、事前に、上記の選択肢1のガイドをご購入いただいておいた方が、
当日のご面談において、より深い話しをさせていただくことができますが、
ひとまず先にご面談をしていただき、その後、上記のガイドのご購入をご検討いただくという流れでも問題ございません。
オンライン等でのご相談サービスにつきましては、
下記のページにて詳細をご案内しておりますので、お申込み前にそちらもご参照くださいませ。
ステップ2:
正式に法人設立をご依頼されることを決定された場合は、その旨、Eメールにてご連絡いただきましたら、
そのメールをもって正式にご依頼いただいたものとさせていただき、
必要な書類の詳細なご案内や、書式のサンプル等を送らせていただきます。
お問い合わせはお早めに!
マレーシアでの手続きは、日本ではありえないような事情により想定外に時間がかかることがあります。
また、インターネット上に出回っている情報が少ないうえに、ご自身で役所や現地専門家に問い合わせをされても、
担当者によって回答が異なることは日常茶飯事ですし、
その道のプロである現地専門家からも十分な解説が得られないというのがマレーシアです。
弊社コンサルタントは、ひとつの論点に対して複数の現地専門家から回答を集め、
なぜそれらの回答がそれぞれ異なるのかという点まで研究したうえで、ご相談者様へ見解をお伝えいたします。
ご自身であれこれとお悩みになるよりも、まずはお気軽に弊社へご相談いただけますと幸いです。
あるいは、ラブアン法人に関しましては、ひとまず上記のガイドをご購入いただきましたら、
ある程度はお知りになりたい内容が含まれているかもしれません。
オンラインストアには、目次も載せておりますので、ご参照いただき、ご購入をご検討いただくとよいかと思います。
お問い合わせについてのご注意事項
弊社のコンサルタント熊木雄介は、日本では、司法書士法人F&Partnersに所属する司法書士ですが、
マレーシア業務に関しましては、
熊木個人が経営するマレーシア現地法人 KS Global Solutions Sdn. Bhd. 、または、ラブアン法人 KSG Holdings Ltd.
として受託させていただいております。
したがいまして、お問い合わせにつきましては、司法書士法人F&Partnersではなく、
下記のマレーシアの連絡先へお願い致します。
メールでのお問い合わせ
上記お問い合わせフォームからではなく、
下記のメールに直接メールをお送りいただくかたちでも問題ございません。
(下記メールアドレスをクリックしていただきますと、お客様のメールソフトが自動的に起動します。)
メールアドレス: info@office-kumaki.name