今更ながらのリンギット安&インフレ対策【マレーシアでの資産運用】

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こんにちは。
KSG Holdings Ltd.の司法書士 熊木です。

マレーシアで生活を始めて11年が経ちました。この間、マレーシアの経済はそれなりに大きく成長しましたが、一方で通貨であるリンギットの価値は大きく変動しています。11年前、私がマレーシアに来た頃は1米ドルが3リンギット程度で安定していましたが、2024年5月現在、1米ドルは4.7リンギットまで下落し、実に40%近い下落となっています。

幸いなことに、円安の進行により、円との比較ではリンギットの下落をあまり実感しません。しかし、ユーロや英ポンド、シンガポールドルといった他の主要通貨と比べても、リンギットの価値は明らかに下落傾向にあり、看過できない問題になっています。

マレーシアの高金利定期預金で放置しているうちに…

私がマレーシアへ来た11年ほど前は、マレーシアの銀行は定期預金に5%という高金利を提供していましたので、リンギットの価値が徐々に下がっていくことにも、それほど危機感を抱いていませんでした。高金利がリンギット安を補ってくれると楽観的に考えていたのです。

しかし、最近は状況が変わり、定期預金の金利は2.5~3%程度にまで低下し、マレーシアの年間インフレ率も3%前後で推移しています。つまり、定期預金に預けていても、実質的な価値はほとんど増えないどころか、むしろ目減りする可能性があります。

私も、もっと早くから資産運用について真剣に考えるべきだったのですが、本業が忙しく、ついつい後回しにしてしまっていました。リンギットの価値下落が現実味を帯びてきた今、後悔先に立たずですが、これからでも遅くないはずですので、積極的に情報収集を行いながら、今の時代に合った適切な資産運用を進めていきたいと模索しています。今回のブログ記事はその模索の記録です。

現在の資産構成と今後の計画

私の資産構成としては、主には、

  • 日本に仕事をしていた頃に貯めた日本円(ほぼ銀行預金)
  • マレーシアでのラブアン案件で貯めた米ドル(定期預金・個別株・ETF・債券)
  • マレーシアでの国内案件で貯めたリンギット(ほぼ定期預金で15%ほどが株式)

で構成されています。

主要通貨である円とドルである程度の分散はできているものの、リスク高めの通貨であるリンギットの割合が結構高くなってしまっている点が問題です。

リンギット建ての資産は、マレーシア個別株への投資もしているものの、その大半は定期預金に留めています。

この状況を放置しておくと、マレーシアのインフレにより実質的には徐々に目減りしていくことを意味しますし、リンギットがさらに下落した場合、対円との関係においても資産が目減りしてしまうリスクがあります。

そこで、今後の改善策として、
複利で運用していたリンギット定期預金の3分の2程度の自動更新をストップし、

  • 一部をユーロや英ポンド、シンガポールドルといった他の主要通貨へ両替
  • 一部をマレーシア市場や海外市場の個別株やETF、債券などの金融商品へ投資

という方向性で徐々に移していくつもりです。資産を複数の通貨や金融商品に分散させることで、リスクを軽減し、より安定的な資産運用を目指すとともに、マレーシアでのインフレ対策とします。

外貨への両替に関しては、
マレーシアの銀行もマルチカレンシー対応ですので、オンラインバンキング上でリンギットから他の通貨への両替が容易に可能です。少し大きめの金額を銀行で両替する際には、事前に銀行員に伝えることで、特別な優遇為替レートで両替してもらうこともできます。

ただ、日本と同じく、銀行の両替レートはあまり良くないですので、証券口座のプラットフォーム上での両替なども活用しながら分散していきます。

個別株やETF等の金融商品への投資に関しては、
国際的なインデックスETFへの投資をベースとしながら個別株投資や債券投資も行いますが、マレーシア進出のサポートをしている立場をしているわけですから、私自身もマレーシア経済の成長を信じて、マレーシア証券取引所の株式にも投資を続けていく予定です。これまでもマレーシア株式への投資は行ってきましたが、今後はさらに積極的に投資を行っていきたいと考えています。マレーシア経済の成長を肌で感じながら、資産運用を行っていきます。

個別株やインデックスETFへの投資のリスクヘッジとして、債券や債券ETFへの投資も行います。特に、現在アメリカの金利がかなりの高水準となっておりアメリカ長期国債の価格が下がっていますので、将来的にアメリカの金利が下がったときに備えて、中長期のリスクヘッジとしてアメリカの長期国債も仕込んでおきます。

なお、不動産などの実物資産を含めておくとなお良いのでしょうけれども、私程度の資産総額の場合、不動産投資を行うとポートフォリオが大きく不動産に偏ってしまうため、不動産投資信託(REIT)を仕込んでおく程度に留めています(Bukit BintangのPavilionモールのReitやMidvalley MegamallのReitなどを長年保有しています)。

マレーシアでの投資プラットフォームとETFの課題

マレーシアで個別株やETF等への投資に関しては、以前は銀行(Hong Leong Bank)のグループ会社である Hong Leong Investment Bank で投資口座を開設して使っていましたが、オンラインプラットフォームのデザインが私にとっては使いづらいと感じていたため、最近はInteractive Broker証券とMoomoo証券を使い分けています。

Moomoo証券はマレーシア市場の金融商品への投資に主に使い、Interactive Brokers証券はマレーシア国外の金融商品を購入する際に使っています。

Moomoo証券:マレーシア株と米国株

Moomoo証券では、マレーシア株のほかに米国株の購入も可能です。ただ、マレーシア国外の金融商品への投資に関してはInteractive Brokerに一本化するつもりですので、Moomoo証券の口座は主にマレーシア株への投資に使っています。

Moomooのオンラインプラットフォームは、洗練されたデザインと使いやすいインターフェースのほか、リアルタイムの株価情報や分析ツール、投資コミュニティなど、投資に役立つ機能が充実しています。特に、投資コミュニティでは、他のユーザーと情報交換したり、意見を聞いたりすることができ、投資の参考にできる点も気に入っています。

ただ、申込みの際に「マレーシア株の取引は手数料無料」と書いていたのですが、実際に取引をしますとプラットフォーム使用料などで1回あたり3~4リンギの最低手数料が発生しているような気がします。日本はほぼ無料が一般的かと思いますが、マレーシアでは以前使っていたHle Brokingを利用していたときは一取引あたり8リンギほどかかっていたので私としては良しとしています。

Moomoo Malaysia – One App to Trade Malaysia & US Stocks

Interactive Brokers証券:UK株、米国株、日本株等の幅広い選択肢

マレーシア国外の金融商品への投資には、以前このブログでもご紹介したInteractive Brokersが便利です。Moomoo証券ではマレーシア株のほかは米国株しか購入できませんが、Interactive Brokers証券では世界中の株式やETF、オプション、先物など、幅広い金融商品にアクセスできるのが魅力です(ただし、マレーシア市場へのアクセスは不可)。

私の用途としては、UK市場でアイルランド籍のUSD建てのETFを購入したり、日本市場で日本円建てのインデックスETFを購入するためにInteractive Brokersを利用しています。

ただ、私のInteractive Brokersの口座には大きな問題がありまして、なぜかリンギットでの入金ができません。リンギットで入金をしようとすると、「日本人によるリンギット建てでの入金は許可されていません」というようなエラーメッセージが表示されてしまいます。これが私の口座特有の問題なのか、マレーシアに済む日本人全員に適用されるエラーなのかは不明ですが、この問題のおかげで、「現在保有しているリンギットを外国株へ投資する」という目的を達成するためには、少し手間をかける必要があり非常に不便な状況です。

Interactive Brokersのサポートに問い合わせたところ、「現在リンギットでの入金は対応していないが、将来的には対応する予定がある」とのことでした。しかし、具体的な時期は未定なので、対応を待ちつつ他の方法を模索中です。

なお、米国株や米国のETFへの投資に関してはMoomoo証券からでも可能なのですが、以前のこちらのブログ記事で書きました通り、マレーシア居住者は米国株やETFからの配当に関しては30%もの源泉税が控除されてしまうのに対して、同じアメリカ株を対象としたETFを購入する場合でも、UK市場に上場しているアイルランド籍のETFを購入することにより源泉税を抑えられる可能性があるようです(もう少し調査研究が必要ですが)。この点から、Moomoo証券からの米国株購入だけでは足りず、「リンギット⇒UK市場のアイルランド籍ETFの購入」の選択肢を確保しておきたい、と云う次第です。ただ、米国市場の株やETFを買う際は一取引あたりUSD 1前後の最低手数料なのですが、UK市場の株式を買う際は一取引あたりUSD 4の最低手数料が発生している点がネックです。とはいえ、配当に対する源泉税が安くなる分を考えれば大きなものではないので、私としてはこれをOKとしています。

Interactive Brokers証券

マレーシア市場のETFの現状

マレーシア市場での投資に関しては、当初はマレーシア市場のインデックスETFに積み立て投資をするつもりでした。インデックスETFは、市場全体の値動きに連動するように設計された投資信託で、ETF株を購入するだけで幅広く分散投資できるのが魅力です。

マレーシアのETFを調べてみますと、マレーシア市場の上位30社で構成されるインデックス指数 FTSE Bursa Malaysia KLCI Index(マレーシア総合指数)に連動する「FTSE Bursa Malaysia KLCI ETF」というETFが見つかり、投資を検討しています。

ただ、調べている中で気がついたのですが、マレーシア市場のETFはあまり取引が活発ではなく、2023年5月現在、マレーシア証券取引所(Bursa Malaysia)に上場しているETFもわずか10数本しかないようです。

Malaysian ETFs – Overview (bursamalaysia.com)

上述した「FTSE Bursa Malaysia KLCI ETF」に関しても、取引量が少なくて売り買いが成立していない日もあるのか、5日チャートもカクカクしています。

これは、売りたい時に売れなかったり、買いたい時に買えなかったりするリスクがあるということかと思いますし、例えば、あるETFの1日の取引量がわずかしかない場合、まとまった金額を売買しようとすると、希望の価格で約定しない可能性があります。また、取引が少ないため、価格が大きく変動することもあり、思わぬ損失を被る可能性もあります。

金を投資対象とするETFもありましたので試しに買ってみようとしたのですが、実際なかなか約定しません。

TradePlus Shariah Gold ETF (0828EA.KL) Stock Price, News, Quote & History – Yahoo Finance

そして何より一番の問題は、マレーシアのETFは年間マネジメント報酬が年間0.5%もあります。インデックスETFのマネジメント報酬は0.1~0.2%あたりのイメージですので結構割高感があります。

これらの問題から、今のところ、マレーシア建ての資産運用に関しては、ETFでのインデックス投資を諦め、自分で分散ポートフォリオを組んで個別株投資をする方向にシフトしました。手間はかかりますが、個別に株を購入する過程の情報分析も私の仕事においては結構勉強になりますので良しとします。

まとめ

マレーシアでの資産運用は、リンギットの価値変動や投資環境などを考慮すると、簡単ではありません。しかし、様々なプラットフォームや金融商品を活用することで、リスクを分散し、安定的な資産形成を目指せるはずです。

今後も、マレーシアの経済状況や投資環境の変化に注意を払いながら、柔軟に資産運用戦略を調整していくつもりです。

現状、私のポートフォリオのうち、リスク高めの資産であるマレーシア・リンギットの割合が大きくなりすぎていますので、大半を外貨(ドルやJPYはすでにあるので、EUR、GBP、SGDなど)へ両替し、残りのリンギットの半分以上を個別株やREITに分散して投資します。また、金のETFや数年前に紹介した金の現物を購入するサービスなども利用し、現物資産の割合も増やす予定です。

私は投資の専門家でもないですので今回の記事がどの程度役に立つかわかりませんが、マレーシアで資産運用を考えている方の参考に多少にでもなれば幸いです。

最近読んでいる面白い本

『21世紀の金融政策 大インフレからコロナ危機までの教訓 (日本経済新聞出版)』ベン・S・バーナンキ (著), 高遠裕子 (翻訳)

この本は、1970年代の大インフレからコロナ危機までの経済政策を解説し、その教訓を示しています。特に、各時代の金融政策の変遷とその影響が分かりやすく描かれています。私のような経済学の初心者でも理解しやすい具体例が豊富で、インフレ時代に突入したと言われている今、今後何が待ち受けているかを自分の頭で考えるときの指針になります。お勧めです!

 

それではまた。

2024年5月16日

司法書士 熊木 雄介
Email: info@office-kumaki.name

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