日本人がマレーシア人とEメールをする際の心構えや注意点

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こんにちは。
KSG Holdings Ltd.の司法書士 熊木です。

今回はマレーシア人とのEメールでのコミュニケーションについて。

マレーシアは多様な文化が融合する東南アジアの国であり、ビジネスにおいても多くの日本企業が進出しています。しかし、日本とマレーシアではビジネス文化やコミュニケーションスタイルに大きな違いがあるため、Eメールでのやり取りに苦労されている場面をよく目にします。

日本人側からよく聞く不満点

  • 返信が遅い
  • 返信がない
  • 返信内容が曖昧/漠然としているため、何度もやり取りが必要になる
  • 詳細な説明がない
  • 言うことがコロコロと変わる
  • 質問が無視される
  • 進捗状況の報告がない
  • 約束が守られない
  • アポの調整に時間がかかる
  • 期限ギリギリまで連絡がない
  • 相手側の事情で期限ギリギリになったにもかかわらず、最後はこちらが急がされる

ただ、これらの不満点は両国間の文化の違いに起因するものであり、どちらの国のスタイルが良い悪いと言えるものではありません。

本記事では、マレーシア人とEメールで円滑にコミュニケーションを取るための心構えや注意点を解説します。文化の違いを理解していただき、ストレスを感じずに仕事を進めるための一助となれば幸いです。

なお、マレーシアは、マレー系、中華系、インド系等の多民族からなる国家ですので、「マレーシア人」と言っても民族によって文化やコミュニケーションスタイルに違いはあります。ただ、下記で述べていることは概ねどの民族に関しても該当するものですので、マレーシア人全般とやり取りをされる際のご参考にしていただいて大丈夫かと思います。

レスポンスの遅さや途中経過の報告の少なさ

マレーシア人は日本人に比べますと時間に対してかなり寛容・柔軟です(ただ、この点は「マレーシア人が」というよりもむしろ、他の国と比べて「日本人が」時間に厳格すぎる)。

また、マレーシア人にとって、Eメールは緊急性の高い連絡手段ではなく、他のタスクの合間に処理されるツールという認識を持っている方が多い印象です。そのため、日本のように迅速な返信はあまり期待できず、1~2週間後に返信が来る場合も珍しくありません。また、依頼している案件の途中経過の報告についても、積極的に経過報告を行う文化ではないため長らく何の連絡もないというようなこともあります。進捗状況を把握したい場合はこちらから積極的に確認する必要があります。

 具体的な事例

  • 返信がないので催促したところ、「すぐに返信します」との回答があった。こちらが急いでいることも十分に伝わっている様子だった。ところが、返信があったのは数日先だった。

  • 見積りを依頼したところ、1週間以上待っても返事がない。プロジェクトをスタートするために早急に見積もりを送っていただきたい旨を伝えた。ところが、まったく急いでいる様子もなく、結局、見積もりの提示までに1ヶ月近くかかった。

  • 案件を依頼している弁護士事務所に質問をメールしたところ、回答が届いたのは1週間後。そのうえ、1週間待ったにもかかわらず弁護士からの回答は一行のみ。再度その回答の背景や細かい点について質問メールを送ることになり、さらに数日待つことになった。

  • 会計事務所に会計資料を送信し、決算準備を依頼するメールを送ったところ、その後数ヶ月何のアップデートもない。こちらから状況確認をしたところ、ようやく今から着手する、という様子だった。
対策
  • メールを送った後、相手からタイムリーに回答があることは期待せず、24~48時間後にスヌーズを設定しておき、それまでに返信がなかった場合はリマインダーメールを送信する。
  • 緊急性の高い案件の場合は、メールを送った後、WhatsAppなどのメッセージアプリで担当者にメールを送ったので確認してほしい旨を連絡する。
  • マレーシア人はテキストでのやり取りよりも電話やミーティング等での口頭のやり取りを好む人が多いため、質問が多岐に渡る場合はメールでのやり取りは早めに諦めてオンラインミーティングを設定してもらう。
  • メールではあまり返信をくれない相手の場合もWhatsApp等のメッセージアプリであればすぐに回答をくれることがある。Eメールとメッセージアプリを使い分けがポイント。ただし、「メールでの返信=正式な回答」「メッセージアプリでの回答=非公式な回答」と考えている人もいるため、メッセージアプリでの回答は間違っていることも多かったり、回答を責任をもたない人も多い。メッセージアプリで回答を得た後、その内容を自分でメールにまとめ、メールとして相手に送信し、この理解で正しいかどうかの回答を求めておくのがベター。複雑な質問事項に関しても、こちらが背景などをまとめ、Yes Noで答えるかたちでメールしてあげるとメールでの返信もスピーディーに得ることができる場合があります。

質問が無視される

複数の質問を書いたメールを送った場合に、マレーシア人からの返信メールにおいて、それらの質問のうち一部のみに回答があり、その他の質問に関しては一切言及がない、というようなことがあります(「質問2に関しては検討中ですので後日改めて返信します」というような記述もない)。

まるで質問が無視されているように感じるかもしれませんが、私の経験上、「ひとまず先に直ぐに回答できるものを回答しておく、そして回答できないものはまた後日別のメールで回答する」という場合に「質問2に関しては調査をしてからまた次のメールで回答します」と一言添えることもなく、回答できる質問のみひとまず返信しておく、というスタイルのマレーシア人は結構います。

特に、法律事務所や会計事務所などは、調査が必要な事案に関しては最終的な回答がある程度固まるまでは、「今調査中です」というようなことさえもなぜかアップデートしてくれない事務所があったりします。

対策
  • 質問は明確に冒頭に書く。箇条書きを使うなど視覚的にもわかりやすく。
  • 質問を簡潔にまとめることも重要である一方で、日本人とマレーシア人では共有している文化や習慣が大きく違うため、質問に関連する背景・経緯などを付記しておくほうが適切な回答を得やすい(異なる文化同士でコミュニケーションを取る場合、お互いにできる限り正確に情報を伝える意識を持つことが重要です)。
  • 質問をする際は、日本語の言い回しから英語への直訳ではなく、できる限りマレーシア人が使っている表現や単語を使うように意識する。マレーシア人が使っている表現や単語などを使えるようになるためには、「相手のメール文章から言い回しや表現を持ってくる」方法のほか、「マレーシアの英語のウェブサイト、ニュース、書籍に目を通しておく」ことで身についていくかと思います。
  • 質問に対する回答が漏れていた場合でも、「質問が無視された」とストレスを感じることなく、再度、未回答の質問をメールし、根気強く回答を求める。

背景や詳細の説明が省かれる

マレーシア人は、日本人に比べて詳細な説明を大幅に省く傾向があります。ひとまずは簡潔にメールを送り、相手から細かい点について質問があった部分のみ詳細を説明する、という流れで考えている人が多い印象です。

具体的事例:

  • こちらから「〇〇をする場合、資本金は□リンギで大丈夫ですか」と聞くと、「No problem!」と回答が届きますが、実は、その事案の場合はとある特別な前提条件を満たしているためにその資本金でOKという背景があったりします。つまり、その前提条件が変わった場合にはその資本金額ではNGとなるわけですが、日本のように親切に「今回の場合は〇〇という前提条件を満たしているため資本金は□リンギで大丈夫です。ただ、〇〇の前提条件が変わった場合には別の資本金要件が適用されることになります」とは先回りして回答をしてくれないことが多いです。
  • 決算手続きの中で、会計事務所から「X社との取引の流れを教えて下さい」というようなざっくりとしたリクエストが届きます。「なぜこの情報が必要なのか」「取引の流れのうち、どのような部分を特に知りたいのか」などを書いてくれないので、こちらとしてもX社との取引の工程のうち、どの部分を特に注意して回答すればよいのかがわかりません。ポイントがわからないまま回答したものがそのまま採用され、後日、重要な部分が抜けていて問題になる、というようなこともあったりします。
  • 会計事務所等がクライアントの署名が必要な書類を送ってくる際も、署名前にクライアント側で事前に入力が必要な専門的な部分がありクライアント側が混乱するのは予想できるにもかかわらず、まずは一切の説明無しで書類のみを送ってきて、クライアントから質問があった後にその部分のみ回答する、というような具合です。

  • A⇒Bという工程が順番に必要となるプロジェクトを進めている際に、まだAが完了していないにもかかわらず、まるですでにAが完了したかのように次のステップであるBに関する案内が届いたりします。これも日本であれば、「まだAの手続きの途中ではありますが、Aが完了次第、次の工程Bに進めるようにするために、今のうちにBについてもご案内申し上げます」等々の前文を付したうえでBに関する案内が届くかと思います。マレーシアの場合、このような前文はすべてカットで、突然Bの案内が届き、日本人としては「あれ、Aはすでに完了したんだっけ?」「この担当者、Aはすでに完了したという認識なのかな?」と不安を覚えることになります。ところが、日本人から「まだAが完了しておらず議論中という認識ですが、、、」とメールすると、そのときになった初めて「まだAの手続きの途中ではありますが、Aが完了次第、次の工程Bに進めるようにするために、今のうちにBについてもご案内した次第です」と返事があったりします。
対策
  • 質問やリクエストの趣旨や背景を確認しないままに回答してしまうと、御社にとって不利な回答をしていることになる可能性もあります。回答する前にどのような趣旨での質問であるかを確認することをお勧めします。ただ、この確認に対する回答を得るにも時間を要することがありますので、ひとまずざっくりと回答をして相手に情報を与えたうえで、その回答メールの中で、念の為この回答で趣旨にあっているかどうかを聞くのが良いかと思います(少しでも前に進めながら詳細を聞いていく)。
  • 相手からのアドバイスには期待せず、不明点や心配な点は御社側から積極的に質問することが大事です。日本のように、顧客側の懸念点や必要な手続き等を先回りしてアドバイスをしてもらえるとは期待されないほうがベターです。

アポイントメントの取り方

アポイントメントの取り方も少し工夫が必要です。

日本人同士でアポを調整する場合、複数の候補日時を提示し、その中から選んでもらう、というようなかたを取ることが多いかと思いますが、私の経験上、マレーシア人は、まずは候補日をひとつ示し、それが不可なら次の候補日を提示するという進め方をすることが多い印象です。

対策

相手方に候補日を出してもらうよりも、まずは御社側から候補日時を複数提示し、その中から相手方に選んでもらう、という方が早いかと思います。

お勧め書籍

異文化間のコミュニケーションスタイルの違いについては、最近読んだ下記の本がとても勉強になりました。マレーシア移住前に読んでおられることをお勧めします。

『異文化理解力』エリン・メイヤー著

 

まとめ

マレーシア人とEメールでコミュニケーションを取る際には、文化の違いを理解し、忍耐強く、丁寧にコミュニケーションを取ることが大切です。

異なる文化間のコミュニケーションでは、いわゆる「ローコンテキスト」の国で行われているコミュニケーションスタイルを採用し、お互いに、できる限り「明確に意図を伝える」ように努力し合うことが大事です。「行間を読んでもらうことや、こちらの意図をニュアンスから読み取ってもらうことは期待しない」という心構えが良いかと思います。

文化や教育が違うのでコミュニケーション方法に食い違いがあるのは当然です。相手の文化を尊重し、心穏やかに丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。

 

それではまた。

2024年4月17日

司法書士 熊木 雄介
Email: info@office-kumaki.name

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